武庫川女子大学 建築学科・大学院建築学専攻
 ■2012年度 特別公開講演会 入場無料・事前申込不要

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日本の伝統と新しい耐震構造デザイン

講演者:和田 章 先生
(東京工業大学名誉教授/日本建築学会長)

会場の様子
 和田章先生(東京工業大学名誉教授/日本建築学会長)を講師としてお招きし、「日本の伝統と新しい耐震構造デザイン」というタイトルで講演会を開催しました。和田先生は構造工学や耐震設計をご専門とされており、耐震・免震・制振技術分野における日本の第一人者です。

 講演前半は、薬師寺の塔の組物や正倉院の柱、さらにはトロハの傑作であるマドリードの競馬場、サーリネンのダレス国際空港など豊富な実例の写真を見せていただき、「設計者やそれを作った人、それを守ってきた人、建築や街に住む人々、将来ここに住む子孫、建築それ自体、材料や資源、地球、そして自然に対する尊敬や愛の気持ちが大切である。そして何より原理をよく理解しそれを使えることが重要である」とのメッセージを学生に送っていただきました。また、豊富な写真や振動実験の動画などを見せていただきながら、塑性変形の重要性、設計者に必要な態度、座屈拘束ブレースの構造と機能などの解説をしていただきました。また地震の後、建物は人が住まなくなりすぐに取り壊されることが多く、本当にこれでいいのか、という問題提起もなされました。

 講演後半は、中国四川大地震や阪神・淡路大震災などにおける倒壊した建物の写真を見せていただき、耐震構造には骨組みの強さのみならず、塑性変形能力、構造物の一体性、そして心棒の役割が重要であることを解説していただきました。さらにはその考え方を応用した先生の設計実例の解説もいただきました。また災害に強い持続可能な都市と国家をつくっていくことの重要性を説かれ、長年に渡る悪習であるスクラップ&ビルドではなく新しい技術による建築・都市の構造強化、都市機能の地方分散化と地方活性化などのお話をいただきました。さらには東日本大震災を受けてこれから我々が考えなければならないことにも触れられ、「人間の行いは隙間だらけだが、自然には隙間がない。自然の中にわれわれは生かされている、という西岡棟梁の言葉が大切だ」というお話をいただきました。

 構造分野のお話を、日本の伝統的な実例を織り交ぜながら非常にわかりやすく解説していただいたのみならず、そこから見えてくるこれからの建築や都市や国の在り方、そしてわれわれ自身の在り方にまで話題が及ぶ、非常に幅広い講演内容で、構造分野の最前線の世界に触れることができた大変貴重な機会となりました。

和田章先生 ご講演の様子
和田章先生 ご講演の様子 地震で倒壊した建物の写真を見せていただく
和田章先生 ご講演終了後の質疑応答の様子
日時
2012/10/6(土) 13:00〜16:30
会場
上甲子園キャンパス 甲子園会館 西ホール
西宮市戸崎町1-13 <JR「甲子園口」駅下車徒歩7分> >>甲子園会館へのアクセス
■参加対象者事前申込不要・入場無料 (学外の一般の方も参加可能です)
講演者: 和田 章 先生 (東京工業大学名誉教授/日本建築学会長)
プロフィール
1946年生まれ。東京工業大学工学部建築学科卒業。同大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社日建設計を経て東京工業大学教授。1984年ワシントン大学外国人講師、1991年マサチューセッツ工科大学客員教授。現在、東京工業大学名誉教授および日本建築学会長。専門は、構造工学、耐震設計など。1995年日本建築学会賞(論文)「建築構造物の非線形挙動の解明とその応用に関する一連の研究」他受賞多数。
■問い合わせ先  
武庫川女子大学建築学科 TEL:0798-67-4501
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