大学院 建築学研究科 建築学専攻 授業風景
修士2年生【海外保存修復実習】
ICSA in Istanbul 2019 トルコ・バフチェシヒル大学における海外実習
建築学科・建築学専攻修士課程(6年)は、2013年4月26日(金)に、日本で初めて建築系学士修士課程プログラムとして日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定を受け、UNESCO-UIA建築教育憲章に対応するプログラムとして認められました。そこでは地域固有の、そして世界の多様な生活や文化などに深い洞察のある人格を養い、グローバルで国際的な活躍ができる建築家を育成します。この教育目標の一環として、2008年12月に締結したトルコ・バフチェシヒル大学との間の一般交流協定に基づき、2010年度から、建築学専攻修士課程の大学院生と教員が約半月間先方を訪れ、授業の一環として保存修復関連の実務訓練を行う海外実習を開始しました。
2019年度もそれに引き続き、2019年10月27日(日)から11月9日(土)の14日間、修士2年生の24名が海外保存修復実習の授業の一環として実習を行います。
引率者:柳沢教授、川崎助手
13-14日目「チャムルジャヒル見学、スケッチ展、帰国」
2019年11月8-9日(金-土)
8日の午前中に、イスタンブールのアジア側にあるチャムルジャヒルを訪れ、これまで見学したイスタンブールの街を一望しました。その後、バフチェシヒル大学で、13:00からエントランスホールにてスケッチ展を行いました。建築デザイン学部の教員や学生はもとより、これまでにICSA in Japanに参加した卒業生たちも多く参加してくださいました。スケッチ展では、本学学生が、トルコ語と英語を交えて今回の実習の感想を発表しました。発表のあとは、学生たちが描いたスケッチを鑑賞しながら互いに交流を深め、多くの学生と教員にご意見をいただきとても有意義な展示会となりました。その後イスタンブール国際空港へ向かい、帰国の途につきました。9日の夕方に皆元気に関西国際空港へ到着。14日間のとても充実した実習を終えました。
12日目「ゼイレック・ジャーミィ見学、スケッチ展の準備」
2019年11月7日(木)
本日はゼイレック・ジャーミィを見学しました。このジャーミィは、もとはギリシャ正教の修道院として建てられたもので、イスラム教の神学校として使われたこともありました。現在は修復が終わっており、美しい内部空間を見学、スケッチすることができました。その後、すぐそばの庭園にあるカフェにてジャーミィの外観をスケッチしました。午後からはバフチェシヒル大学の教室を借りて、明日開催されるスケッチ展の準備を行いました
11日目「スルタンアフメット地区見学」
2019年11月6日(水)
本日はイスタンブール旧市街のスルタンアフメット地区を見学しました。はじめに、ビザンチン建築の最高傑作で直径31mの大ドームをもつアヤソフィアを見学し、スケッチを行いました。その後、ブルーモスクと呼ばれるスルタンアフメットジャーミィを見学しました。スルタンアフメットジャーミィは現在修復中のため内部空間全体を見ることはできませんでしたが、修復前と後の変化がわかる壁もあり、修復の重要性を確認することができました。最後にローマ時代の地下貯水池であり、336本の大理石の柱が天井を支える、地下宮殿を見学しました。本日の見学には、ICSA in Japan 2019 に参加したトルコの学生も参加し、交流を深めました。
10日目「金角湾周辺見学、バフチェシヒル大学建築デザイン学部校舎見学」
2019年11月5日(火)
本日は金角湾方面に行きました。まずはイスラム教徒の聖地であるエユップ・スルタン・ジャーミィとその周囲の墓地を見学。 ICSA in Japan 2019に参加したトルコの学生2人も合流しました。その後ロープウェイで移動し、金角湾の絶景で有名なピエール・ロティを訪れ、カフェから見えるイスタンブールの街をスケッチしました。またピエール・ロティが小説を書いたといわれる建物の修復工事が完了し、オープン直前の内部の様子を見せていただきました。次にコチ博物館を見学しました。ビザンツ時代の建物を利用したかつての船のドックを保存修復活用し、現在は博物館として生まれ変わり、多くの人々が訪れています。トルコにおける保存修復活用の成功例で、ビザンツ時代の遺構に対する保存修復の方法を実地に学びました。その後、バフチェシヒル大学の新キャンパスであるベシクタシュ北キャンパスを訪れ、ムラト学部長に、建築デザイン学部の校舎を案内していただきました。
9日目「ボスポラスツアーほか」
2019年11月4日(月)
14日間の実習も折り返しを過ぎた本日は、午前中各自スケッチ展の準備やレポート作業を進めました。午後は、ボスポラスツアーに参加しました。ボスポラス海峡の景観は法律によって守られています。緑豊かな丘陵と海岸沿いの伝統的な木造住宅や宮殿、ジャーミィ、丘の斜面の住宅群などが織りなすイスタンブールならではの景観の特徴を学びました。その後はバフチェシヒル大学の屋上テラスにて、夕暮れのボスポラス海峡の風景をスケッチしました。
8日目「ビュユック島の大規模木造建築の見学、ベシクタシュ見学」
2019年11月3日(日)
本日は、イスタンブールのマルマラ海に浮かぶ、プリンセス諸島の中の一つであるビュユック島へ行き、大規模木造建築であるグリーク・オルファネージを見学しました。港から徒歩で急勾配の坂道を上り、さらに松林の山道をしばらく登ったところにグリーク・オルファネージがあります。コンスタンティノープル総主教庁に所属する建築家ポリディスさんに解説いただきながら見学しました。1898年に建てられた世界最大級の木造建築といわれ、5階建ての約2万㎡の規模です。当初はホテルとして建てられ、その後孤児院として使用されてきました。現在は廃墟となっており、保存修復の議論が行われています。その後イスタンブールへ戻り、ベシクタシュにあるミマール・スィナンの作品のひとつ、スィナン・パシャ・ジャーミィを見学しました。
7日目「エディルネ見学」
2019年11月2日(土)
本日は、ギリシャやブルガリアとの国境近くに位置するエディルネを見学しました。かつてはハドリアノポリス(アドリアノーブル)と呼ばれた街で、オスマン帝国の首都であった時期もありました。またイスタンブールが首都となった後も、オスマン帝国の副都として重要な役割を果たしました。オスマンの建築家、ミマール・スィナンの最高傑作と言われるセリミエ・ジャーミィを見学し、スケッチを行いました。次にエディルネで現存最古のエスキ・ジャーミィ、オスマントルコが初めて完成させた大ドーム空間をもつモスクのひとつユチ・シェレフェリ・ジャーミィを見学しました。最後に、修復建築事例の好例で音楽療法のための空間が特徴的なバヤジット2世の医学博物館を見学しました。
6日目「クデップにおける保存修復実習、スレイマニエ・ジャーミィ見学、バフチェシヒル大学表敬訪問」
2019年11月1日(金)
イスタンブールの市の組織で、木造建築を中心に保存修復を手掛けるクデップ(KUDEB)にて実習を行いました。まずはクデップの概要について動画を見せていただきました。次に実物や図面を見ながら、ドアの修復方法の説明を受けました。次に大工による、部材の切り出しやカンナがけ、埋め木等の実演を見せていただき、自分たちでカンナがけも体験しました。最後に、模型を用いて、スレイマニエ地区にある木造住宅の軸組の特徴を学びました。午後からはオスマン建築の巨匠ミマール・スィナンが設計したスレイマニエ・ジャーミィを見学、スケッチを行いました。夕方にはバフチェシヒル大学へ移動し、シリン学長を表敬訪問。学生たちへ激励のお言葉をいただきました。最後にボスポラス海峡を見渡せる屋上テラスで記念撮影を行いました。
5日目「ユルドゥズ宮殿およびドルマバフチェ宮殿における保存修復実習」
2019年10月31日(木)
本日はユルドゥズ宮殿およびドルマバフチェ宮殿にて保存修復実習を行いました。まずはユルドゥズ宮殿の工房に行きました。ユルドゥズ宮殿をはじめとするトルコ国内の国立宮殿を対象とした工房です。家具の仕上げや装飾、木材加工、カーペットなどの工房を見せていただきました。その後ドルマバフチェ宮殿の修復中の現場を見学しました。また修復中のドアの実測も行いました。宮殿を維持するために多くの専門家が関わり、地道な修復作業を続けていることや、極めて科学的な調査が土台になっていること、そして伝統技術を尊重する姿勢などを実感することができました。
4日目「イズニックタイルの制作実習ならびにソロズの歴史的木造住宅建築の見学」
2019年10月30日(水)
本日はイズニック湖の近くにあるIznik Foundation(イズニック財団)にて、イズニックタイルの制作実習を行いました。イズニックタイルは、トプカプ宮殿などトルコの伝統的建築には欠かせない工芸品です。はじめにイズニックタイルの材料や作り方等について解説していただきました。その後、学生たちはアトリエで、各々が選んだ伝統的な図柄の絵付けに挑戦しました。開放的なアトリエの雰囲気とスタッフの方々のご協力のもと、学生たちはとても楽しく制作に取り組むことができました。また展示室や図書館、オフィスなどが入るイズニック財団の新棟の工事現場も見学しました。
昼食をはさんでつぎに、2011年に修復が完了したアヤソフィア・ジャーミィを見学しました。最後にソロズという町を訪れ、100年以上前に建てられたという大規模な伝統的木造住宅を見学した後、イスタンブールへの帰路につきました。
3日目「ブルサ見学」
2019年10月29日(火)
本日はオスマン帝国最初の首都であるブルサを見学しました。はじめに、約700年の歴史を持つ伝統集落のジュマールクズクを見学しました。「ジュマール」とは金曜日に由来し、金曜日に周辺の村の人々がこの村のモスクに集まってくることからこのような名がつけられました。この集落は近年注目されており、建物の保存修復復元が多く行われています。迷路のような街路を散策し、トルコの伝統住宅のデザインや構法の特徴について学びました。その後ブルサの中心市街へ移動し、かつては隊商宿だったコザ・ハン、「大きい」という意味を持つウル・ジャーミィ、「緑のお墓」という意味を持ちメフメット一世が眠るイェシル・トュルベ、「緑のジャーミィ」という意味のイェシル・ジャーミィを見学しました。
2日目「トプカプ宮殿見学」
2019年10月28日(月)
本日は、イスタンブールがオスマン帝国の都となった時代に、歴代のスルタンが居住していたトプカプ宮殿を見学しました。数多くの庭園、離れ(キオスク)、美しい建造物群で構成された宮殿を、ムラト先生に解説していただき、スケッチを行いました。華やかなイズニックタイルやドームの美しさに学生は感動している様子でした。本日もデモ等の問題はありませんでした。
1日目「トルコに向け出発」
2019年10月27日(日)
関西国際空港を27日の朝に出発し、ソウルの仁川国際空港で乗り継ぎ、夜にイスタンブール国際空港に到着しました。イスタンブール国際空港で、迎えにきてくださったバフチェシヒル大学建築デザイン学部のムラト学部長とシネム先生と合流し、バスでホテルへ向かいチェックインしました。関空出発からおよそ20時間の移動に学生たちは疲れた様子ですが、幸い体調不良者はおらず、元気な様子です。明日からは本格的に実習が始まります。