武庫川女子大学東京センター主催の講演会シリーズ『わが国の近代建築の保存と再生』の第9回目の講演会「近代日本の支配層が愛した小川治兵衛の庭」が、1月11日（土）に東京丸の内の日本工業倶楽部会館で行われました。今回は、京都工芸繊維大学准教授の矢ケ崎善太郎氏、造園家で京都造形芸術大学教授の尼崎博正氏をお招きしてご講演をいただきました。当初は、東京大学名誉教授の鈴木博之氏をお招きする予定でしたが、やむを得ない事情により、急きょ矢ケ崎氏に講師を変更いたしました。

矢ケ崎善太郎氏からは「山縣有朋の無隣庵からはじまる小川治兵衛の世界」というタイトルでご講演をいただきました。琵琶湖疏水の開通、明治政府による南禅寺の敷地の召し上げ、田辺朔郎のアメリカ視察とその後の蹴上発電所の完成などの歴史的背景をご説明いただき、南禅寺界隈の一大庭園群の成立の理由を示していただきました。そして第三次無隣庵をはじめとする山縣有朋や伊集院兼常の別邸をご紹介いただくとともに、煎茶文化の影響を受けた数寄空間へとつながる歴史の流れを解説いただきました。

尼崎博正氏からは「小川治兵衛の造園技術と意匠」というタイトルでご講演をいただきました。まずは飛鳥京跡苑池にはじまり桂離宮や修学院離宮にまで至る日本庭園史の概要をご説明いただきました。さらには南禅寺界隈疏水苑池群の水系構造をご紹介いただきました。その後、１）立地と空間構成、２）植栽の工夫、３）水の意匠、４）庭石の諸相、の観点から、小川治兵衛の庭の特徴をご説明いただき、それらの特徴は小川に限ったものではなく、日本庭園の大きな流れの中に存在するということを示していただきました。

今回も多くの方々にご来場いただきました。誠にありがとうございました。この講演会シリーズ『わが国の近代建築の保存と再生』は、2011〜2013年度の3年間の開催予定でしたが、お陰様でご好評をいただいておりますため、もう1年延長させていただくこととなりました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。次回は2014年5月24日（土）に「近代数寄空間」と題しまして、今回に引き続き、京都工芸繊維大学准教授の矢ケ崎善太郎氏、造園家で京都造形芸術大学教授の尼崎博正氏をお招きします。どうぞご期待ください。

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