シルクロードの文化と建築 講演会シリーズ
「シルクロードの文化と建築」 講演会一覧
武庫川女子大学は講演会シリーズ「わが国の近代建築の保存と再生」を、東京駅前の日本工業倶楽部で平成23年から開催しています。明治以降のわが国の近代建築とは、洋風と和風という二つの異文化が表裏をなしながら見事に共存している生活空間であったことを紹介してきました。
平成27年度から、新たに講演会「シルクロードの文化と建築」を加えることになりました。本講演会シリーズでは、シルクロードには、わが国と地中海を結ぶはるかにダイナミックで長い歴史の異文化交流があります。どうぞご期待ください。
(武庫川女子大学教授 岡崎 甚幸)
シルクロードという言葉は歴史的であると同時に、いくぶんロマンの香りを漂わせた象徴的な表現です。絹と絹製品は、紀元前7世紀ごろ中国の春秋時代に作り出されたと『漢書』地理志に記されています。戦国時代の前5世紀ごろにはもう広く周辺地域に交易品として流布していたにちがいありません。絹が東西交易の花形のようになるのは、おそらくローマが深くアジアと関わるようになってからでしょう。中央アジアは、その東西文物交流の回転盤の役割を果たし、遠近、国・民族の違いも関係なく越境的な文化の流布に大きく貢献したのです。わが国の正倉院はその文化のしぶきをありのままに受け止めています。
シルクロードの核となる地域の遺跡が多く世界遺産に登録され、世界の関心を惹くいま、もっとも早くその価値を認め、もっとも持続してシルクロード文化の結晶を保全してきた日本人として、いまその歴史の密度を改めて振り返るときではないでしょうか。
(和光大学名誉教授 前田 耕作)
シルクロードは、日本人のみならず、世界中の人々の好奇心や探究心をかきたててきました。シルクロードの東の端に位置する日本、そして日本人は、つねにこのシルクロードを憧憬の眼差しで見つめてきました。シルクロード沿いの地域では、いくつもの文明が興り、幾多の王朝が興亡を繰り返し、歴史にその名を刻んできました。また、そこに住む人々は、多様な自然環境に適応して生きてきただけでなく、豊かで、素晴らしい文化を生み出してきました。シルクロードは、何千年にもわたって人々が生きてきた舞台です。それと同時に、このシルクロードは、何千年もの間、人々の交流、交易の場でもありました。21世紀に入り、グローバル化が叫ばれる今、この講演会は、洋の東西を結んでいたシルクロードを見つめ直す貴重な機会となるでしょう。
(帝京大学文化財研究所 教授 山内 和也)